診療方針 | 患者さんが真に満足する歯科医療の実現に向けて

診療方針

細見デンタルクリニック院長 細見洋泰

患者さんが真に満足する歯科医療の実現に向けて

細見デンタルクリニック院長の細見洋泰と申します。

当クリニックでは、現在の歯科治療のなかで実現しうる「最高の技術・素材・考え」をテーマに、患者さんが真に満足する歯科医療の実現に取り組んでいます。


下記は歯科臨床家のための学術誌「ザ・クインテッセンス(Vol.27 No.1/2008)」から抜粋した、私の執筆文です。当クリニックの考えをご理解いただければと思い掲載しました。どうぞご一読ください。

儲からないものはダメなのか?

医療であるにも関わらず、歯科界の悪い風潮として以下の2点が挙げられます。

●古いものはダメで、新しいものはよい

●儲かるものにすぐ飛びつき、儲からないものはおざなり


たとえば、インプラントも義歯もその本質を知って、適材適所で用いるべきであり、簡単に優劣はつけられないと思います。あくまで医療なのですから、患者さん自身が人間として咀嚼機能を確実に回復でき、QOL(Quality of life:生活の質)の向上に貢献できるかを考える必要があると思います。


保険診療と自費診療に関しても同じことがいえます。自費診療だから、非常に質の高い最高レベルの医療を提供できるとの声もありますが、医療の本質が分からない歯科医師が行う自費治療は、有名無実といえます。インプラントがもてはやされる昨今、患者さんから「歪んだ歯科医療」と思われないように、「患者さんが真に満足する歯科医療」へ、真剣に取り組んでいく必要があります。

義歯・入れ歯を軽視・誤解していませんか?

通常、1〜2歯欠損から、1〜2歯残存までの範囲を補うのが部分床義歯学で、歯がまったくなく義歯で咀嚼機能を回復するのが総義歯学です。つまり、クラウンブリッジから総義歯にいたるまでの間を補う重要な位置を占めるのが部分床義歯学です。それなのに、なぜこんなに敬遠されているのでしょうか。


部分床義歯が難しいのは、粘膜面の上にある床、床の上にある人工歯、それと残存歯との間に被圧度として動く量の大きさが違い、何ミクロンの単位で考えないと咬合の調和がとれない点です。つまり、咬合の与え方が分からないと、部分床義歯はうまくいかない。つまり、難しいから嫌だとなるわけです。


そして、インプラントのような動かないものがあれば咀嚼はできる、という誤った考えも散見されます。


「歯は動かず義歯床の部分が動く」というなかで、どうバランスをとるかの学術的な議論がしつくされないうちに、「保険・保険外」、「儲かる・儲からない」というファクターからの治療オプションの選択に移ってしまったことが問題です。


もう1つの問題は、部分床義歯の患者さんが要介護になった場合、リスクを含みながらも、部分床義歯だからこそ簡単に修理などをして咀嚼機能を回復できるのですが、インプラントはそうもいかないことが多いという点です。インプラントが動揺しているにも関わらず、全身的なリスクが非常に高いため除去さえできず苦しむ患者さんもいるということを絶対に忘れてはいけません。

東京23区でも部分床義歯の需要は高い

インプラントの特性を理解して適材適所で用いるのはすごくよいのですが、まず、残存歯が保存できるならば、そのもっている優位性、歯根膜がもっている運動制御機構・レセプターを口腔運動生理学として生かすことが一番だと私は考えます。


とくに高齢者にとっては、インプラント埋入などの大きな外科的侵襲は大きな負担になります。ですから、私は患者さんから「インプラントはどうでしょうか」といわれたときに、「大変有利ですよ」とはいえません。


「部分床義歯を何とか道具として使いこなしていただいたほうが、骨にも穴はあきません。また、いつまでも健康というわけにはいきませんから、要介護になったときにトラブルが起きにくい状態が保ちやすいですよ」と説明しています。細見デンタルクリニックは、高齢者ばかりが来院するというわけではありませんが、東京23区内でも、まだまだ部分床義歯の需要が多いという現実は全国の歯科医師に知ってほしいのです。


また、部分床義歯では咀嚼機能の回復ができないとは、約30年の臨床経験上思っていませんし、大学での講義・実習の際も、咀嚼機能を回復できるだけの咬合調整や粘膜面の印象、設計上の問題、そして、部分床義歯の重要性を学生に伝えています。


繰り返しますが、もちろん、単独歯欠損など適応症によっては、インプラントに優位性がある場合も理解しています。しかし、「使えるところ・使えないところ」、「使うところ・使わないところ」は、もう一度見直す時期にきているのではないかと考えています。

総義歯は本当に安定性が悪いのでしょうか?

「総義歯は安定が悪く咀嚼機能を回復できないから、インプラントを打ってオーバーデンチャーにする」との声も聞かれますが、これも安易な考えです。


凸面である顎堤に凹面に近い形の総義歯を装着し、咀嚼機能を図ることは難しいのですが、安定性は保たれます。「チェアサイドで100点の力がでる人間は、ベッドサイドでは60点の力しかだせないだろう」といわれますが、高齢社会が進展し、ベッドサイドでの治療は増える一方です。


リスクが非常に高くなってからインプラントを外せといわれたケースもありますが、難易度は非常に高いのです。そして、インプラントにより顎堤が吸収してしまった後では、義歯でもリカバリーできないのです。

患者さんのQOLを考え治療オプション選択を

インプラントがすべてでも、部分床義歯・総義歯がすべてでもありません。それぞれの補綴物・人工物はそれぞれの特性があるわけですから、術者はその適応症を考え用いるべきであり、自分の力量不足により違う治療オプションを選択せざるを得ないというのでは、話になりません。

患者さんのことを真剣に考え臨床に臨むのが、私たち歯科医師が果たすべき使命であると考えます。

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